三焦 読み方(さんしょう) 別名:孤腑(こふ); 中瀆の府(なかとくのふ); 決瀆の官(けつどくのかん)
六腑の一つ。「上焦」、「中焦」、「下焦」に分ける。部位からいうと、「上焦」は一般に胸隔以上の部位を指し、心、肺を包括する。「中焦」は隔下、『…部以上の部位を指し、脾、胃などの臓腑を包括する。「下焦」は臍以下の部位を指し腎、膀胱、小腸、大腸を包括する(病理生理の角度からは、さらに部位の比較的高い肝も含む。ゆえ「下焦」は往往にして肝と腎を一緒にして論ずる)。機能からいうと、《霊枢・営衛生会篇》には次のように出ている。上焦如霧(上焦は霧の如し;主に心肺の輪送配布作用を指している。中焦如嘔(中焦は嘔の如し;脾胃の消化輸送作用を指す)。下焦如瀆(下焦は瀆の如し;腎と膀胱の排尿作用を指す、腸道の排便作用も含む)。これらの機能は実際には、体内の臓腑の気化機能の総合であり、ゆえに三焦の機能は、まとめて言うと、水穀を受納し飲食物を消化し気血といった精微な物質を生ぜしめ、栄養を輪送し老廃物を排泄することである。「三焦」の「焦」の字には「熱」といった意味が含まれているが、この熱は命門之火に来源しており、気化の作用によって体現されるものである。
「三焦」の実体については、未解決の論争となっている問題である。《霊枢・営衛生会篇》には「上焦出於胃上口、立咽以上、貫隔而布胸中。……中焦亦並胃中、出上焦之後、下焦者、別廻腸、注於膀胱而滲入焉」(上焦は胃の上口から出て、食道に沿って上り、横隔膜を貫いて胸中に分布する。・・・・・中焦は胃中に沿い、上焦の後に出る、・・・・・下焦は回腸と別れて膀胱に注ぎ滲入する)とある。《難経》は三焦とは「有名而無実」(名があって形が無い)としており、張介賓の《類経附巽》には、「・・・・及至徐循、陳無澤始創言三焦之形、云「有脂膜如掌大、正与膀胱相対、有二白脈自中出、夾脊而上、貫於脳・・・・」(・・・・徐遁、陳無澤に至って三焦の形状を言うようになった。すなわち、「手のひら」の大きさの脂膜がありちようど臓胱と対応する」二本の白脈がその中から出て脊をはさんで上り脳を貰くと・・・・・・)と記載されている。張氏本人は、「三焦為臓腑之外衛」(三焦は臓腑の外衛である)。所謂焦者、像火類也、色赤属陽之謂也。今夫人之一身外自皮毛、内自臓腑、無巨無名、無細無目、其於腔腹周團上下全体、状若大嚢者、果何物耶?且其着内一層、形色最赤、像如六合、総護諸陽、是非三焦而何?」(いわゆる焦とは火のようなもので、色は赤く、陽に属するという。人の身体は外は皮毛、内は臓腑であるが、腹腔の周囲上下の全体、大きな嚢のような形をした、とりたてて大きくも小さくもなく名目もはっきりしないものは果して何であろうか。その内側の層は色が最も赤く、六合(十二経別の陰陽による六つの組み合せ)のように諸陽を総括保護している。これが三焦なのだろうか)としている。《医学正伝》ては、「三焦者指腔子而言・・・・・総言三焦、・・・・其体有脂膜在腔子之内、包羅乎五臓六腑之外也」(三焦とは腔を指して言うので、・・・・・・三焦を総称し、・・・・その形状は腔の中に脂膜があり、五臓六腑以外のものを網羅する)としている。王清任の《医林改錯》では「網油」が三焦であるとしている。唐容川の《血証論》では「三焦、古作膲、即人身上下内外相聯之油膜也」(三焦は、古くは膲と作り、すなわち人の身体の上下内外をつなぐ油膜である)と言っている。以上は古代の医家のいくつかの主要な論点であるが、とれも、三焦の人体における気化総合機能を全面的には解釈できていない。書きぬいて参考とする。
中医学アカデミー代表・世界中医薬連合会常任理事・中医師
1959年生まれ。遼寧中医薬大学卒業後、大連第三人民病院内科学中医内科で医師として勤務。1990年に日本へ来日し、日本医大丸山ワクチン・薬理教室の客員研究員を務める。その後、日本中医薬研究会の講師を経て、特定非営利活動法人「中医薬学会連合会」を設立し理事長に就任する。翌年には中国世界中薬学会聯合会常任理事も兼任。2011年に世界中医薬学会聯合会認可のもと中医学アカデミーを設立し、国際中医師の育成と中医学の普及に力を注いでいる。
来日以来、日本の教育現場で自らも講師として教壇に立ち、中成薬の使い方をはじめ、中西医結合の研究・中医基礎・中医診断学・中医中薬学・中医方剤学・中医内科学・中医臨床等の指導や、初心者への講演などを実施。累計1000人以上の生徒を指導し、500人を超える国際中医師を育成している。
2022-02-22 この用語に関連するタグ:臓腑関係
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